2025年7月12日に、石川県国際交流協会さん主催の【令和7年度「外国人住民との共生を考える講座」(テーマ別研修会)】に呼んで頂き、【「生活Can do」を現場で使ってみようー外国人住民の社会参加・エンパワーメントにつながる教室活動を考えるー】という題目で3時間の研修&ワークショップを行いました。
以下に研修内容を報告したいと思います。
※同様の研修をご希望の団体様(自治体、国際交流協会、地域日本語教室など)は
当HP「研修・講座」のページをご確認の上、ぜひ「お問合せ」よりご依頼ください。
3時間の研修は以下の流れで行いました。
1.外国人住民の「社会参加」「エンパワーメント」とは?
2.「日本語教育の参照枠」「生活Can do」を理解する
3.「生活Can do」の活用について考える
4.【グループ活動】「生活Can do」を参考に社会参加・エンパワーメントにつながる 教室活動を考えてみよう
冒頭に、外国人住民受け入れ政策の変遷について触れ、
かつて定住を前提としない政策であった時代から、現在は定住を前提とした政策に変わってきたこと、
そしてそれに伴い、日本語教育の目的も、「正しい日本語の習得」から
現在は「外国人住民のエンパワーメントとしての日本語教育」という点が非常に重要視されるようになってきたことについてお話をしました。
そして、令和3年に取りまとめられた、日本語教育に関わる全ての人たちが参照できる共通の指標(ものさし)である
「日本語教育の参照枠」の概要について、重要な以下の3点に絞って分かりやすく解説しました。
①言語教育観 ⇒日本語を学ぶってどういうこと?
②言語能力観 ⇒日本語が上手になるってどういうこと?
③生活Can do ⇒日本で生活する上で必要となる日本語ってどんなもの?
①では、参照枠の3つの柱と呼ばれる言語教育観を、日本語学習支援に携わる人にとって身近な事例に落とし込んでお話しました。
<言語教育観(三つの柱)>
その1:日本語学習者を社会的存在として捉える
⇒日本語教室に来る外国人住民は単なる「日本語を学ぶ人」ではない!
日本語を使って日本社会に参加し、
自分の能力を日本で生かして日本社会で活躍する人(=社会的存在)なのです!
その2:言語を使って「できること(Can do)」に注目する
⇒日本語の語彙や文型を知っているだけではなく、それを使って「何ができるか」が大切。
日本語でできることを増やす教室活動を考えよう!
その3:多様な日本語使用を尊重する
⇒【聞く・読む・口頭やり取り・発表・書く】のどの言語活動がどのぐらい必要かは
1人ひとり違う。日本人の日本語能力を目標にしない。いろいろな文化・言語に影響を受けた
「外国人住民の日本語」をホスト社会(=日本社会)が受け入れていく必要がある!
②では、参照枠の日本語の熟達度(A1/A2/B1/B2/C1/C2)がどのように示されているかについて分かりやすく解説しました。
「~できる」というCan do(言語能力記述文)で熟達度が表されているということを理解するために
例として「自己紹介ができる」はどんなレベルか?についてみんなで考えました。
③では、令和5年に公開された「生活Can do」がどんなものなのか、
公開されている【「生活Can do」一覧表】を実際に見ながら
「買い物」に関するカテゴリーで検索してみたり、
「A2レベル」の「やり取り」という活動で検索してみたり、
具体的にどんなCan doがあるのかを実際に見ながら体感して頂きました。
そして、「子育て」に関する生活Can doを例に、
そのCan doを参照することによって、地域日本語教室などでどんな教室活動ができるか
事例をご紹介しました。
最後の【グループ活動】では、3つの学習者像から1つを選び
「生活Can do」を参考に外国人住民の社会参加・エンパワーメントにつながる教室活動のアイデアを
出して頂きました。
会場・zoomのハイブリッド開催でしたが、
会場のグループも、zoomのブレイクアウトルームのグループも、
活発に議論し、意見を出してくださいました。
「子育て中の保護者」のための活動を考えたグループからは、こんな声が聞こえました。
「子どもの習い事の情報を交換するには、まずはママ同士が仲良くならなくちゃ!」
「ママが自分の趣味や特技を紹介し合う活動をして、まずはママ同士が仲良くなるのはどう?」
「子どもの体調不良の時にどんな対応をするか、母国の事情を聞いてみるのはどう?」
「国によって違いがあって、面白そう!」
「日本の「冷えピタ」や「ポカリスエット」を実際に買ってきて体験してもらうと使い方や味も体験できる!」
1人で考えるより、グループで他の人からのアイデアをもらえるっていいですよね。
「生活Can do」は785個もあります。
ぜひ一度「生活Can do 一覧表」をダウンロードして見てみてください。
日本で生活する外国人住民が生活場面で必要な言語行動が具体的に示されているので、
きっと目の前の「その人」に合った教室活動のアイデアが浮かぶはずです!
「日本語教育の参照枠」は画一的な教育内容を示すものではありません。
日本語学習者一人ひとりが必要とする学習内容を、その現場ごとに考えるために参照できるものです。
実際の研修では、「生活Can do」の活用方法について、ここに紹介した以外にも
いろいろな提案をさせて頂きます。
現場や対象者に合った研修内容を提供いたしますので、多くの現場からのご依頼をお待ちしております。
0コメント